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企業の事業活動において十分に理解する必要のあるものが固定資産です。
固定資産は大きく3つに分類され、「有形固定資産」、「無形固定資産」、「投資その他の資産」があります。
それぞれ1年以上の長期にわたり使用する目的で保有する資産ですが、ここでは特に「投資その他の資産」について紹介します。
1.投資その他の資産とは
投資その他の資産は、有形固定資産と無形固定資産以外の固定資産です。
会社が1年超にわたり投資している資産であり、事業に直接使われていないものが該当します。例えば、投資有価証券、子会社株式、出資金、長期貸付金、破産債権などがあります。
投資その他の資産について正しく理解するためには、有形固定資産と無形固定資産について理解する必要があります。そのためにもここからは、有形固定資産と無形固定資産について解説します。
2.有形固定資産とは
有形固定資産は、会社が長期にわたり利用または保有する、実体のある資産です。
また、有形固定資産の中でも減価償却資産に分類されるものは、使用することで徐々にその資産の価値を減少させていきます。
この価値の減少分を費用化することを減価償却といいます。
2-1.有形固定の分類
形あるものとはいえ、ボールペンやカレンダーのように耐用年数1年以下、もしくは減価償却資産で取得価額20万円未満のものについては有形固定資産として扱わず、即時費用化するのが一般的です。
取得価額20万円未満であるかどうかは、車1台あたりいくらか、PC1台あたりいくらかというように、1単位ずつの取得価額で判断します。
有形固定資産は、減価償却資産と非減価償却資産に分類され、取得や売却、除却、減価償却などの処理は固定資産台帳に記録して管理します。
有形固定資産の分類は次のとおりです。
有形固定資産
有形固定資産の分類 |
具体例 |
減価償却資産 |
個別償却資産 |
建物 |
車両運搬具 |
工具器具備品 |
総合償却資産 |
機械装置 |
非減価償却資産 |
土地 |
建設仮勘定 |
2-2.取得価額について
有形固定資産を取得すると、それが減価償却資産か非減価償却資産かによって取得価額の取り扱いが変わります。
減価償却資産だと、取得価額をもとに減価償却をおこない、非減価償却資産では、取得価額をその資産が売却や除却などにより処分されるまで貸借対照表に表示されます。
会社が有形固定資産を購入したときの取得価額には、「資産の購入代」や「資産購入時の付随費用(購入手数料、仲介手数料、荷役費、引取運賃、関税など)」といった費用が取得価額に含まれます。
2-3.処分時について
会社が保有する減価償却資産の中で事業では使わなくなったり、使えなくなったりして不要となった減価償却資産は、処分する必要があります。
不要になる理由としては、主に以下の場合があります。
- ・耐用年数(使用可能期間)の到来したもの
- ・故障などによって使用できなくなり処分されるもの
- ・使用できるが事情があり不要になったもの
このようなときには、売却するか除却するというのが一般的です。
除却とは、何らかの事情で使わなくなった減価償却資産を会社の帳簿から除外することです。
除外する資産の簿価を固定資産除却損として経理処理します。
2-4.決算時について
減価償却の計算は、基本的に決算のときのみおこないます。
それぞれの減価償却資産について、減価償却の計算をおこない簿価から減額します。
減価償却費の計上は任意なので会社の業績によっては減価償却費を計上するかしないかで迷う場合があります。
もし、金融機関に決算書を提出する予定なら減価償却はしておきましょう。
金融機関は減価償却をしているかどうかを見ていますので、減価償却のしていない黒字を取り繕ってもあまり意味はありません。
3.無形固定資産とは
無形固定資産は、法律上の権利など、物理的な実体や具体的な形のないものを指します。
有形固定資産とは異なるのは、実体があるかどうかという点で、大きな違いはありません。
無形固定資産の取得価額をどう決めるか、あとはその取得価額にもとづいて減価償却資産として管理します。
しかし、実体のない無形のものである無形固定資産は、取得価額の決定が簡単ではなく、その価値もはっきりしないものです。
原則としては、取得価額は購入代金とその付随費用(特許出顔料、プログラム開発費用など)の合計額です。
3-1.無形固定資産の分類
無形固定資産には次のようなものがあります。
いずれも権利や知的財産といった文面としては残るものの、形には無いものです。
しかし、所有しているからこそ利益を生む資産であるため、徹底した管理が必要となります。
- ・長期営業活動により生じた無形の経済利益 → 営業権(のれん)
- ・法律上の権利 → 借地権、鉱業権、漁業権、水利権など
- ・法律により独占的権利のあるもの → 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権など
- ・施設等の専用利用権 → 電話加入権、水道施設利用権、電気ガス供給施設利用権など
- ・ソフトウェア → コンピュータープログラム、システム仕様書など
3-2.減価償却について
実態の無い無形固定資産ですが、有形固定資産と同じくその価値は徐々に減少していきます。
パソコンにて使用するソフトウェアなどは時間の経過によって減価しなくても、将来の価値は不確実であることから、減価償却が必要になります。
実際の減価償却では、実態の無いものに修繕や改良という考えはありませんので、原則、定額法でおこないます。
なお、有形固定資産は備忘価額1円まで償却しますが、無形固定資産は全額を償却します。
また、無形固定資産にも有形固定資産のように、減価償却が認められているものと認められていないものがあります。
さらに、減価償却における耐用年数が決められているものと決められていない任意償却の認められるものがあります。
ちなみに、借地権と電話加入権は減価償却の対象となりませんが、これら以外の無形固定資産は減価償却資産になります。
無形固定資産の分類は次のとおりです。
無形固定資産
無形固定資産の分類 |
具体例 |
減価償却資産 |
特許権 |
実用新案権 |
商標権 |
営業権など |
非減価償却資産 |
借地権 |
電話加入権 |
4.投資その他の資産のわかりやすい具体例
ここまで有形固定資産と無形固定資産について紹介しました。
投資その他の資産は有形固定資産と無形固定資産以外のものとなります。ここからは具体例とともに、どのようなものが投資その他の資産に分類されるかを解説します。
4-1.資本参加目的の投資
資本参加目的の投資は、他の会社への影響力を強めるためにおこないます。
一言でまとめると、特定の企業に資本を直接投下する投資です。
会社の経営戦略上で必要となる特定の企業を支配することや、特定の企業と特殊な関係をもつことによって競争上優位になることを目的とします。
該当するものとしては、「子会社の株式」や「子会社への長期貸付金」、「子会社への出資金」があり、「関連会社の株式」、「関係会社の株式」なども含みます。
4-2.長期の利殖目的の投資
長期の利殖目的での投資は、主に会社の余裕資金を長期的に運用するための投資です。
具体的には「投資有価証券(満期保有目的)」や「長期貸付金」、「投資不動産」など該当します。
世界的にも有名になった仮想通貨ですが、目的によって勘定科目が変わるため、投資目的である場合のみ投資その他の資産に分類することが可能です。
仮想通貨を何かを購入するための支払い手段とする場合はその他の流動資産に分類します。
4-3.その他の長期性資産
その他の長期性資産は、必ずしも投資を目的とした資産ばかりではなく、他に含めて記載する適当な区分がない長期性の資産を管理するためのものです。
具体的には次のようなものが該当します。
- ・差入保証金
- ・長期前払費用
- ・更生債権
- ・破産債権
- ・保険積立金
まとめ
有形固定資産と無形固定資産をふまえ、投資その他の資産について解説しました。
いずれも長期にわたり保有・使用する目的の資産ですが、それぞれの特徴によって分類されます。
投資その他の資産は有形固定資産、無形固定資産以外の資産です。他社との関係を変えることや、資産そのものを増やすことを目的としています。
有形固定資産や無形固定資産との違いを理解し、正しく仕訳しましょう。
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